「D5」と略されるデカメチルシクロペンタシロキサンは、近年のスキンケア・ヘアケア市場を支える基幹素材として確固たる地位を築いています。環状シリコーン特有の揮発性と滑らかな指触りを兼ね備えたD5は、使用感の向上だけでなく、処方の自由度を高め、消費者が求める“塗布した瞬間の快感”を演出する強力な味方です。

最大の魅力は“軽さ”です。従来の油剤のようにベタつかず、瞬時に皮膚表面をなめらかに包み込むエモリエント効果は、モイスチャーライザー、美容液、ファンデーションなど、肌に長時間密着する製品で特に高く評価されています。また、毛髪を扱う製品では、毛表皮を軽くシールするように薄い保護膜を形成し、絡まりや広がりを抑え、サラサラとした手触りと艶を与えます。

さらにD5は活性美容成分の溶媒・キャリヤーとしても機能します。紫外線吸収剤をムラなく広げる日焼け止めや、顔料を均一に分散させるメイクアップは、D5の高い相溶性と揮発速度の恩恵を受けていると言えるでしょう。

安全性面では、現在までの臨床・毒性試験でスキン刺激性や感作性は殆ど報告されていません。ただし揮発性有機化合物(VOC)であることから、環境中での残留・蓄積に対する懸念があり、一部の地域ではすすぎ落とし製品への使用制限が導入されています。ローションやリップなど留置型製品では引き続き容認されており、消費者の環境意識の高まりを受けた“サステナブル処方”の検討も同時に進んでいます。

D5がもたらす「使用感の革新」と「処方戦略の拡張」は、品質と持続可能性の両立を目指す次世代コスメティックスにおいて、依然として欠かせない選択肢となっています。