単糖であるD-ガラクトースは、生体内で極めて重要な役割を果たしています。その主な分解経路であるレロワ回路(Leloir Pathway)は、ガラクトースをブドウ糖へと変換する酵素群で構成される細かな反応の連鎖です。この変換はエネルギー供給だけでなく、糖タンパク質・糖脂質など複合糖質の合成にも不可欠です。本経路を理解することは糖代謝の原理を知り、ガラクトーシェミアなどの遺伝性疾患の病態を把握するうえで必須となります。

レロワ回路は3段階からなる精密機構

1. まずガラクトキナーゼ(GALK)がガラクトースをリン酸化し、ガラクトース-1-リン酸(Gal-1-P)を合成。

2. 次にガラクトース-1-リン酸ウリジル基転移酵素(GALT)がUDP-ブドウ糖からウリジル基を転移し、UDP-ガラクトースとブドウ糖-1-リン酸を生成。

3. 最終的にUDP-ガラクトース 4'-エピメラーゼ(GALE)がUDP-ガラクトースをUDP-ブドウ糖に可逆的に変換し、糖解系に投入できる形へ導きます。

これらの酵素はいずれも欠損すると有毒中間産物が蓄積し、重篤な健康障害を引き起こすため、高い精度が求められます。

研究が拓く新たな医療・栄養戦略

レロワ回路に関する研究は、ガラクトーシェミアの病態解明を進めるだけでなく、肝臓や脳のエネルギー状態を反映するバイオマーカーとしての活用も期待されています。個人の糖代謝能を評価し、精度の高い治療方針や栄養設計につながる最前線です。今後、経口糖負荷試験の改良や新たな補酵素療法への応用も視野に、D-ガラクトース代謝は生化学・臨床医療の架け橋となる学術領域へと進化しています。