日本をはじめとする先端研究のなかで、メラトニンは「睡眠ホルモン」という肩書きをこえ、体内の総合防御司令塔として注目されています。近年の分子レベルでの研究が明らかにしたのは、メラトニンが細胞および組織レベルで酸化ストレスを緩和し、老化や慢性疾患のリスク軽減に寄与するという点です。

酸化ストレスは、有害な活性酸素種（ROS）の産生速度が、生体のアンチオキシダント防御システムの処理速度を上回ってしまうことで発生します。これら不安定な分子はDNAやタンパク質、脂質を傷つけ、細胞機能の低下を招きます。

メラトニンは、水酸基ラジカルやスーパーオキサイドアニオンなど様々なROSにダイレクトに反応し、それらを中和して細胞損傷を最小化しますが、それに終わりません。さらに体内で生まれつつある抗酸化酵素群——例えばスーパーオキサイドディスムターゼ（SOD）、グルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼ——の合成を刺激する第二の効果も見出されています。

メラトニンに特徴的なのは、その高い膜透過性によって、細胞膜を越えてミトコンドリアまで到達し、ROSが大量に産生されるエネルギーマシンを直接ガードすることにあります。こうしてミトコンドリア機能と構造の維持を、まるで現場指揮官のように支える役割を果たしているのです。

一部の試験では、メラトニンの抗酸化能力はビタミンCやEを上回る効果を示すデータも報告されており、さらに血脳関門をも容易く通過するため、脳内におけるニューロン保護にも一役買っています。

こうした特徴から、紫外線による光老化を含む眼病予防から、加齢に伴う神経変性疾患の緩和まで、その応用範囲は非常に広がっています。ただし、体内で自然に合成されるメラトニンを補う形でのサプリメント摂取を検討する場合は、必ず担当の医療専門家と相談し、個人にあった用量や摂取タイミングを決めることを強く推奨します。