天然由来で持続可能な原料を求める消費者の声が高まる中、食品業界が注目するのがプロピレングリコール・アルギン酸エステル(PGA)だ。昆布・ワカメなどの褐藻を原料とすることで「海からの贈り物」というストーリーを持ち、クリーンラベル対応と製品品質向上の両立を可能にする。

PGAの原料となるアルギン酸は、汚染の少ない海域で生育した褐藻から採取した多糖類。褐藻は再生可能かつサステナブルな資源であり、世界の沿岸域で毎年安定的に収穫されている。このアルギン酸をプロピレングリコールとエステル結合させることで、酸度の高い食品でも優れた溶解性と機能を発揮するPGA(CAS 9005-37-2)が誕生する。

PGAが高く評価されるのは、多機能性と環境負荷の低さにある。主な用途は次の通り。

  • 乳化・分散安定剤:ドレッシングやソースで分離を防ぎ、滑らかな口当たりをキープ。
  • 高粘度化:ヨーグルトやアイスクリームにクリーミーな舌触りを与え、氷晶の成長を抑制。
  • 泡立ち・パルプ安定化:ビアフォームの保持や果肉飲料の浮遊安定に貢献。

海洋由来であるため、合成添加物と異なり生分解性が高く、脱プラスチックやスコープス3削減を目指す企業にも安心して採用できる。低使用量で高機能を発揮するため、コスト面でも魅力的だ。

PGAを採用するメーカーは、天然系食品添加物市場の拡大を背景に、品質管理・食品安全基準を満たす信頼できるサプライチェーンの構築が鍵となる。価格変動の抑制と安定供給が求められる現在、日本でも褐藻を活用した地域循環型生産体制の拡充が進んでいる。

海の資源と最先端の化学技術が融合したPGAは、美味しさと環境配慮を両立する次世代食品素材として、今後の食品開発の主役になる可能性を秘めている。