消費者が天然・安全な原材料を求めるニーズが加速する現在のマーケットで、食品業界は保存技術のイノベーションを進めている。その中心にいるのが、必須アミノ酸 L-リジンから誘導される天然高分子「ポリ-L-リジン」だ。合成防腐剤に代わる有力候补として、その独自の構造と機能が注目を集めている。クリーンラベル志向とも完全に合致する素材である。

ポリ-L-リジン(CAS 25104-18-1)は、主にストレプトマイセス属菌による微生物発酵で生成されるホモポリマーである。発酵工程から生まれる天然由来のため安全性が高く、卓越した抗菌力をもつ。高い殺菌効果の秘密は、中性付近で顕著となる正電荷にあり。マイナスに帯電した細菌・真菌・酵母など広範な微生物の細胞膜と静電的に結合し、膜構造を破壊。細胞内成分が外部へ漏洩することで細胞は死滅する。この一連の作用が、腐敗菌に対する幅広い抗菌スペクトラムを実現する。

食品保存剤としての最大の利点は高い安定性にある。120 ℃で60分間の加熱でも抗菌活性を維持する耐熱性を誇る。さらに、pH 3~9という広い範囲で効力が持続し、酸性のフルーツから中性の乳製品まで多様な食品に適応可能だ。また水への溶解性にも優れ、配合工程で味や食感を損ねることなく簡便に添加できる。パン、乳製品、レトルト食品、加工肉など、様々な製品の賞味期間延長に活用されている。

安全性においても強いアドバンテージを持つ。自然に存在する物質であるうえ、既存研究では低毒性で変異原性・発がん性がないことが実証済みだ。米国食品医薬品局(FDA)よりGRAS(Generally Recognized As Safe)認定を受けており、食品への添加が世界的に許容されている。天然由来と安全性の兼ね備わった成分は、健康志向の高い消費者に強い訴求力を持ち、ブランドイメージ向上にも寄与する。また、食品ロス削減と収益改善に直結する。こうしたメリットを享受するため、ポリ-L-リジンの安定的な調達に対応できる信頼できる製造拠点も年々増えている。